このブログはフィクションです。ご想像にお任せ致します。
さてさて、クレープリーでのアルバイト生活も2~3週間過ぎなんとなく、慣れ始める。
一応パリに住んでる。アルバイト生活もそれなりに順調。それなりに稼げれば、それ程悪くない・・・。
慣れとは怖いもの、どうでもいい優越感を抱き、もーこのままでいいや。
楽な選択が頭をよぎる。自分は何をしにここまで来たのか。
そして、今日も始まる自問自答。一人悶々と考える。
パリの菓子屋で働くにはどうしたら良いのか?
日に日に、焦る気持ちも強くなる。
ある時、何時もの様に立ち寄ったパリのオアシス、ブックオフ。
色々と日本語の書籍が並ぶなか、一冊の本が目に留まる。
某専門学校が発行したと思われる、料理人向けの参考書。フランス語の調理専門用語や仕事を探す際の手紙の書き方、などなど。
おーこれは使えそうだ。
例文に、〈私の名前は○○○○○です。日本の○○○○○○レストランで5年働いておりました。もっと色々な事を学びたいと思いフランスに来ました。〉
や、
〈私はあなたを尊敬しております。ぜひ、働かせて下さい。〉
など、嬉しい例文がずらり。
良いとこ取りの手紙を書く。
とりあえず、働かせて頂きたい旨を伝える。うまく伝わると良いが、
しかしながら、手紙を書いた所でどうすれば??
ここからは、当たって砕けろ精神。
働くならここ、心の中では決めていた店がある。
ショコラティエ ジャン=ポール・エヴァン
学生の頃、なけなしのお金を叩いて食べたチョコレート。美味かった。きっと凄い所で凄い人達が作っているのだろう。見てみたい。あわよくば働いて見たい。日本にもエヴァンはあるが、やはり本場のパリで。
夢を抱きつつも、ビビリながら恐る恐る、店に向かう。
門前払いか、軽くあしらわれるのか、
販売員にパトロンと言いながら手紙を託す。受け取ってはもらえたが、果たして・・・。
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ようやく、どうにかこうにか、部屋を見つけパリ生活がスタートする。
さて、ここからが本題。
働く場所を探さなくてはならない。とは言えあてなどない。
もちろん、すぐに決まる保障もなく、いや、むしろ雇ってくれる所など無いのかも知れない。常に不安が付きまとう。
ただ、現実、生きているだけで金はかかる。先のことは分からないが、とにかくお金を稼ごう。部屋を探す間、幾つかのアルバイト募集のアノンスを目にしていた。
ラーメン屋や寿司などを提供する日本食の店の求人が多い。その中にクレープリー(そば粉のガレット)調理補助、のアノンスを見つける。よくわからないが、日本語の求人を出していると言う事は日本語が通じる人が居るのだろう。場所も家から自転車で10分ほど、恐る恐る電話をかける。
又、いつもの
相手:アロー
自分:もしもし
相手:あーもしもし
とりあえず、店に来てくれと。
日本人の妻を持つフランス人オーナー。夫婦でやっていて他に数名雇い、店を回しているようだ。
自分も働く先の菓子屋が見つかるまでしか働けない旨を伝え、それでも構わなければ働かせて頂きたい。と、申し出る。
それでも大丈夫との事でアルバイトが始まった。
ブルターニュ地方に由来する店で前菜に名産の生牡蠣があった。
牡蠣剥ける?と、普通剥けない。フランス人に身分素振り教わる。
なかなか難しい。
フランスのレストランのオーダーでよくあるスタイルが、
あくまで例えだが
前菜+メイン+デセール 20ユーロ
前菜+メイン 15ユーロ
メイン+デセール 15ユーロ
こんな感じの並びで、前菜3品、メイン3品、デセール3品の中から一品づつチョイス。
この店の前菜の中に、牡蠣5ヶがあった。これをチョイスされるともー大変💦
仮にも4人グループで全員が前菜に牡蠣を選ぶとすると、20ヶの牡蠣を素早く剥かなければならない。馴れないうちは牡蠣剥き用のナイフが刺さる。痛い。血が出る。それでもオーダーは待ってくれない。次々注文が入る。
まず、皿に塩を盛る、次に剥いた牡蠣を並べ、最後にカットレモンをのせる。ブルターニュ地方由来だけに牡蠣を目的にくる客も多い。本当に戦場。今も両手拳にはナイフの跡が残る。
だが、この時は思いもよらなかったが、後に半年ほどパリのレストランで働く機会があった。この店ではパティシエとしてだが、流れ的に前菜・メイン・デセールの順で料理が提供されるので、前菜が忙しい時はデセールは準備さえしっかりしておけば、さほど忙しくない。この店の前菜にも生牡蠣があった。
前菜担当がピークに忙しい時はヘルプに入る。あるとき生牡蠣の大量注文が。
他の料理の事はよく分からないが牡蠣なら任せておけ、あの時の経験が身を結ぶ!シェフにも何でお前そんなに素早く剥けるんだ、と誉められる。お菓子作りではさほど誉められた事は無いが(笑)
それからは、牡蠣が入ったらユウヤを呼べと(笑)
ただ、日本で牡蠣を触った手でケーキを作るはありえませんが。何事も経験。