LA PORTE D’OR

店主のブログ〜

オカシナタビ  8 痛い

2016.09.20

フランスの鉄道には カルト ドゥーズ ヴァンサンク カルトはカード、ドゥーズは数字の12、ヴァンサンクは25、 12才から25才は運賃が割引になるカードがある。

作り方を教わり、パスポートのコピー、顔写真、申請書類を携え駅の窓口へと向かう。

申請料50ユーロ程を支払い、簡単に作ることが出来た。 フランスの鉄道、主にTGVは同じ区間でも、日にちや、曜日、時間帯によって運賃が変動する。 だいたい、パリ~アンジェ間は40ユーロ前後、ちなみにワールドカップ期間中は60ユーロ位だった。 人気度によって価格が変わる日本では見かけない、価格設定になっている。

このカードがあれば、その価格から2割引き位の価格で切符を買う事が出来る。 なんとも便利なシステムがある。 休みを利用してもう、何回かはパリまで出ている。もう少しで元はとれるか。 が、なれてきた頃に事件は起きる。

いつものように、カルト ドゥーズ ヴァンサンクを使い割引で切符を購入。

TGVに乗り込み出発の時を待つ。 走り出してしばらくすると、駅員がいつも様に検札に回って来た。 切符とカードを提示する。 ボンジュール、メルシーでいつもは終了するやり取りだがその日に限っては パスポートを見せろと。

が、普段パスポートなど持ち歩いてはいない。 ジェスチャーで持っていない。と示すとあろう事か、そのカードを没収されてしまった。 老け顔が災いし、年齢を怪しまれたのか、何とも切ない幕切れとなった。

ああ、50ユーロ。 ここは外国、改めて思い知らされた。

気がつけば、早、3ヶ月。 行きに来た飛行機の有効期限も、旅行者としてのビザも切れかかる。 何はともあれ、帰りの飛行機がある心の支えと、帰る手段を絶たれる絶望感と 今まで感じた事のない気分だ。

心の中に常に思う、自分で望んできたはずなのに自分のせいでなく日本に帰りたい気持ち。 ばあちゃん死なないか。天変地異が起こらないか。 あらぬ葛藤に日々思い悩まされ1日1日過ぎていく。

夏も終わりかけた頃、数店舗お店を統括し経営しているオーナーから指令が下る。 プロエルメルと言う街にあるパン屋さんで日本人が辞めたらしく そっちへ行って欲しいと。 もちろん、拒否権など無い。 慣れ始めたアンジェを後にしプロエルメルへと向かう事となった。

数日後、プロエルメルの店から迎えの車が来て、少ない荷物を積み込み 2時間程かけて連行された。 助手席に座ったが、飛ばす、飛ばす。

こわい。

この段階では、どこに向かっているのかさえよく分からない。 だが感じが良いプロエルメルのオーナーだ。 訳も分からず連れて来られた街だが、鉄道さえ通っていないこの街がまた、凄かった。

オカシナタビ  7 五感

2016.08.25

何も気にしていなかったが、周りの空気に誘われワールドカップを観戦する。

近くのカフェに入り、飲み物を注文しようと店員を呼ぶ。

が、店員。 手のひらをこっちに見せ、ちょっと待て。と もう一度呼ぶ。

すると、今、良いところだから少し待って。と お国柄。客でも待たせる。 笛がなると、で、何?と(笑) みんなサッカー大好き。野球など知らない。 現にスポーツ用品店に行っても野球用品など売ってもいない。

そして、ジダンが頭突きをした瞬間、一瞬、街が静まり返る。 そして、大ブーイング。

もちろん相手選手にだ。 その時点では詳細はよく解らなかったが、もっとやれ!と 隣のおっちゃんは叫んでいた。 凄い場面に立ち会ってしまった。 ジダンと言う人はこんなにもみんなに愛されていて、まさに神。英雄なのだと。

パリまで出て買い物をするとき、必ず立ち寄っていた場所 ブックオフ。この空間だけは日本そのもの。 日本の書物、CD、などなど、懐かしい物が並ぶ。 日本から持って来たが帰国時に売って帰る おそらくそんな感じだとは思うが、嬉しい空間だ。 店員も日本人。

近くには日本人が多く集まる地区があり、値段はそれなりだが日本食が買えるスーパーがあったり ラーメン屋や寿司屋なども多い。

特別美味しい訳ではないが、ラーメン屋に行くと フランス人が焼そばをパスタの様にクルクルとフォーク巻いて食べたり、チャーハンにタバスコ。 餃子にソースと意外と面白い。 きっと、外国人から見れば日本人のおかしな所もたた有るのだろうと思う。 ここでは当たり前が存在しない。

色んな人、民族、言葉、習慣、様々な人間模様が入り混じる。 陸続きの国境、電車で国をまたぐ感覚、島国の日本では感じた事の無い感覚が 沢山ある。 自分はこれだと思えば突き進む。真っ直ぐ進めば間違えに気づいた時にそこまで戻って見れば良い。

途中、あっち行ったり、こっち行ってみたりすると、間違えに気づいた時に戻れない。 全ての五感を頼りに行動する。 言葉には変え難いが、頼る物が無いと、自然と感覚が研ぎ澄まされ、どんな些細な情報も見逃すまいといった 感情、精神が芽生える。

日本にいる内は、日本と言う国に守られている。のたれ死ぬ事はまずない。

が、一歩外に出ると、自分で行動せねばなにも始まらない。 右に行ったら何があって、左に行ったらこれがある。 たまの休みに、買い物がてらアンジェからパリに通い、ようやくパリの街が見えてきた。

*写真は自分の中の聖地・パリ、ブックオフ

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