LA PORTE D’OR

店主のブログ〜

オカシナタビ 4 ガイコク

2016.07.14

モンパルナス駅 初めてのTGV、フランスが誇る高速鉄道。

軍隊だろうか、3人一組で小銃を手に辺りを見回す。本物。ファマス。 ちょっと興味が合ったが心に余裕が無い。

確認に確認を重ね車両に乗り込む。 座席は指定席、また、確認に確認を重ね着席する。窓側だ。 2人がけの座席、隣にサラリーマン風の男性が座る。 一時間半後、そろそろアンジェーにつく頃か。 隣のサラリーマン風の男性はどこで降りるのだろう。寝ている。 アナウス、まもなくアンジェーと、窓側に座った自分は隣の男性になんて言って通してもらえば良いのか? 降りる気配は無い。 絞り出した言葉、ソ、ソーリー…。 なんとか席を立つ事が出来た。

何気無い事一つ一つに神経を尖らせる。 取りあえずの目的地、アンジェーに降り立つ。 ・・・。

よし!ケーキ屋を探そう。住所は分かっている。 取りあえず、駅前にいたじっちゃんに住所を見せ四方八方指を指し、こっちか?あっちか?とジェスチャーで訪ねる。 軍人上がりなのか、腕時計を指差し、3時の方向だ! と教えてくれた。

歩き始める。3時の方向と言われても・・・。どこ??歩ける距離? 不安ながらもしばし歩く。どこまで歩けばよいのか・・・。 ふと、振り返えるとさっきのじっちゃん。 手招き。 カモン。俺に付いて来い!と 大通りをぬけ、商店街に入る。ここだと。

ありがとうじっちゃん。

日本を出て3日目、ようやくたどり着いた、目的地。 が、定休日。・・・。

絶望。

しばらくフリーズしてしまったが仕方がない。町をさまよう。 今日はどこで寝よう。日も暮れかかり困り果てる。 幸い持ってきた荷物の中に薄手の毛布がある。どんな状況なのか日本では想像も出来なかったが 3日分の着替えと辞書、毛布、お金。持って行きたい物は沢山あったが小さめのスーツケース、荷物は最低限。 どれだけ歩くか分からないので軽さ重視が功をそうした。ある程度、想定の範囲内だ。 いざとなれば、公園で毛布にくるまり夜を明かそう。

しばらく歩くと、漢字のカラフルなネオンの店が目に留まった。 漢字と言ってもなんて書いてあるかは読めない。 ○○酒家、てきな外国にありがちなおそらく中国の人の店だ。 漢字に心ひかれ、なんだか嬉しかった。今日もろくな物を食べていない。 行ってみるか。なんか食えるだろう。

思い切って店の扉を開ける。 すると、アジア人風の男性が3人女性が1人。 唐突にジャパニーズ? と聞かれ、 イエスと答える。 すると厨房の奥にいた、ごついおっちゃんが 片言の日本語で、サヨウナラと。 ??? 彼らの表情から察した。日本人に食わせる物など無い。と言わんばかりだ。 足場に立ち去る。 なんとも言いようのない殺伐とした空気、感情。俗に言う差別。 ただ、当時冷静にこれが差別ってやつかと捉えてる自分がいたのも覚えている。

色んな人がいる。日本とは違う。痛感する。 先程の毛布にくるまって寝よう、なんて思っていた事が幼稚な考えに思えてきた。 訳の分からん日本人。ヘタすれば殺される。 今日はホテルを探そう。

オカシナタビ  3 切符

2016.06.27

よし。 パリも残す所あと1泊。 明日、アンジェーと言う町まで行く切符を買おう。幸いにも駅は目の前。

意気揚々と窓口へ、5、6カ所ぐらい窓口が並んでいる。 はて?どこでも一緒?よく分からぬまま、向かって右の窓口へと並ぶ 朝から長蛇の列。30分程並びようやく順番がきた。 窓口のおばちゃんに地図を見せここに行きたい。と、指をさし伝える。

バリバリのフランス語で %※%☆¥¥%☆*‡%と言われ、右の方を指さされる。 隣に並べと言うことか? 仕方なく、隣の列へ。 またしても30分位並ぶ。やっと自分の番が来た。 先制パンチ、%#*☆¥☆※¥☆*※#%‡%。

チーン。

地図を指差し必死に訴えるも

ドゥーユースピーク イングリッシュ?

ア リトル

ドゥーユースピーク フランセーズ?

ノー

おばちゃんのため息、 締めの一言

ネクスト。

あえなく撃沈。

途方に暮れかけたが、気を取り直し辞書を引く。 何か使えそうなフレーズは無いか、なんとかそれっぽい言葉を紙に書き再び窓口へ。 今度は3番目。 又しても、 並ぶ事30分。ようやく巡って来た自分の番。 メモを見せ、パリからアンジェーと必死に訴える。 が、又しても右へとジェスチャー。

おいおい、またか。 よく分からぬまま、4番目の窓口へ。 流石に気が滅入る。 が、又しても右へと。 時は既に昼時、午前中並び続け、切符一枚も買えぬこの虚しさ。

駅構内が見渡せるベンチに腰掛けしばらく人の流れを見つめる。

あることに気づく、今まで自分が並び続けていた窓口は割合身軽な人が目立つ。 反対にスーツケースなど大きな荷物を抱えた人はデパートの入り口のような所に進んで行く。

ここでハッとした。                               

あの右へのジェスチャーは隣の窓口では無く、デパートの入り口のようなあの場所を意味していた事に。 気を取り直しいざデパートの入り口へ。 自動ドアの向こうにTGV高速鉄道の文字。

制服を着た駅員。先ほどまでのおばちゃんとは明らかに違う。 しかも、すいてる。 そして直ぐに自分の番が来た。 先ほどのメモを見せる。まだ若めの兄ちゃんだ。

パリからアンジェ、

トゥデイ?

トゥモロー

リターン?

オンリー

まだ若めの兄ちゃん、仮にジュリアンと名付けよう。 このジュリアンがなかなか飲み込みの早い青年で、巧みなジェスチャーと簡単な英単語でなんとか作戦を成功へと導いてくれた。                                      メルシージュリアン。

結果的に、パリには主要駅が6カ所ありそこから各都市へとTGV、日本で言う新幹線が発着している。 アンジェーへは、モンパルナスと言う駅からTGVが発着しているが自分はサンラザール駅で切符を買い求めた事がまた、ややっこしく さらに例えると 新宿駅小田急線の窓口で、新幹線の切符を買い求めているような感じだったと今更ながら思い返す。

今でこそ、笑い話に思えるが当時、スマホなんて物があるわけでもなく行動あるのみ。 ギブアップすれば誰か助けてくれるのであれば、とっくに音を上げていたところだ。  でもね、誰も助けてくれない。 気付けば夕暮れ。1日がかりでようやく一枚の希望を手にすることが出来た。 写真は、今では良き思いでの1コマとなった?切符です。

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