このブログはフィクションです。ご想像にお任せ致します。
良くも悪くも、ここプロエルメルのブーランジェリーパティスリーで渡仏後初めてのクリスマスを迎える事となる。
当日、朝2時出勤。が同僚のミカエルが来ない。3時過ぎようやくの出勤。するとここでまさかの出来事が起こる。警官が2人続けて入って来るではないか。ついに、来るべき時が来た終演。強制送還か・・・。就労ビザなど無い。
シェフと何やら話している。真剣な表情だ。ヤバイ・・・。この隙にトイレの窓から逃げるべきか、部屋に戻れば張られているかもしれない。このままパリまで出れば何とかなるか。いやバス停もヤバイだろう。気分はハリソン・フォード、ダム底に飛び込みたい位だ。短時間で様々な事が頭をよぎる。
よりにもよって、クリスマス・・・。
恐る恐る、隙間から厨房を伺う。すると、シェフと警官が万遍の笑みで話しているではないか???
後から聞けば、遅刻のミカエルが黒いパーカーでフードをかぶり猛ダッシュしていた所を警官に怪しまれ、後を追って来たらしい。おいおいミカエル。寿命がちちんだぜ。
そんな、こんなでクリスマスイブも無事終了。
そして、クリスマス。朝2時に出勤しひたすら作る。日本では当たり前の様に徹夜に突然する流れだが、なんせフランスで初めてのクリスマス勝手が分からない。17時を過ぎた頃かオーナーが、シャンパン片手に現れる。
ポン!グラスを手渡され飲めと(笑)マジ?苦笑いで見返すとウインク。隣にある、イタリアンレストランからピザが届く。皆でつつき、飲む。日本では有り得ない光景だがいつもの事らしい。酔っぱらったシェフが「ユウ(自分)飲め!」とシャンパンを注いでくれる。調子に乗って飲む。
楽しむ事を忘れない人達。本当、可愛がってもらったと思う。
仕事終わり毎週土曜、教会の前に貝売りのおじさんがやってくる。
毎週末の密かな楽しみの一つだ。ムール貝やあさり、牡蠣などを軽トラで売りに来る。たいてい、ムール貝を1キロ購入する。約5ユーロ位。どういう訳かあさりは高い。
仕事は朝4時から始まり、午後2時位には終わる。帰りにいつもオーナーがバケットを1本持たせてくれるのでバケット片手に貝売りおじさんの所でムール貝を購入し帰路につく。鍋にバター、にんにく、玉ねぎ、ムール貝、最後に白ワインをふりかけ火にかける。日本で言うところの酒蒸し。ムール貝からでる程よい塩加減で最高のムールマリネが出来上がる。
その残り汁を生クリームで伸ばし、塩、コショウで味を整え茹でたパスタを絡めて食す。これがまた美味!皿に残った、ソースをバケットで拭き取る様に食す。これがまた美味!日本で食べるバケットとあの頃食べていたバケット。気持ちの問題か材料の違いか、全然別物に感じる。他に大した娯楽が無い分、食べられる喜びみたいな物があったのか。
徐々にではあるが、慣れ始めたフランス・プロエルメル生活。気がつけば秋、肌寒い日が増えてきた。当時の洋服と言えば日本から持ってきたTシャツ3枚、ズボン1枚。どれもだいぶくたびれてきた。よし、服を買おう。少し郊外にあるしまむら的な店に向かう。試着出来るのか、サイズの違いはどうなのか、服1枚買うのにビビる。意を決して購入した赤いトレーナー。案の定デカい。日本と違い手にとって見るを嫌がるフランス人、何かの本に書いてあった言葉が脳裏をよぎる。試着出来ますか?と言えたらどんなに楽か。返品出来ますか?はい。言えない。
大きな夢を抱いて来たはずなのに何ともちっぽけな自分。一つクリアすればまた新たな難題。そんな繰り返しの中でいつも始まる、自問自答。職場の人達は皆親切。もう直ぐ、クリスマス、フランスの田舎町のクリスマスもどんな物か見てみたい。よし、年が明けたらパリに行こう!酒が入ると強気ではあるが、また、新たな職場探し、住居の確保。諸々考えると・・・。こうしてまた、自問自答に突入し1日が終わる。
そんな時、よく聞いていた曲がある。日本から送ってくれた荷物の中に弟が入れてくれたであろうミスチルのCD、その中の一曲「ALIVE」何気に聞いていたがすごく心に入ってくる。
意味はなくとも 歩は遅くとも
残されたわずかな時を
やがて高野に 花は咲くだろう
あらゆる国境線を越えて
報いはなくとも 救いはなくとも
荒れ果てた険しい道を
いつかポッカリ 答えがでるかも
その日まで魂は燃え
ご存知のかたも多いとは思いますが、ミスチルALIVEぜひYouTubeか何かで聞いてみて下さい。
写真はムールマリネ!本当、よく食べました!